日本財団 図書館


 

しており、こうした環境の中で、青少年が宿泊しながら多様な体験をすることは、日ごろの身近な場所では味わうことのできない感動を得ることができる。施設は学校とは異なった様々な教育機能を有するわけであるから、それらの特色を生かしたプログラムの展開に留意すべきである。特に、それぞれの施設の自然環境条件を生かして思い切り直接体験をさせることは、今の青年に不足していると言われているものを補うもっともよい方法ではないだろうか。そのためには、職員がその地域の自然に詳しいことは当然だが、歴史や文化にも十分な理解を持つことが求められる。また、その地域との連携も忘れてはならない大切な点である。特に、野外活動のプログラムでは、地域で活躍する専門家を随時非常勤講師のような形で招くことや、助言を受けることなども必要であろう。
また、自然観察や野外活動などのプログラムに関する部分だけでなく、近年とみに高まっている環境問題への関心も、青年の家がその恵まれた自然環境条件を背景にして、環境教育対応のプログラムを積極的に展開するなどの方策も有意義であろう。具体的には、施設の立地条件や周辺の関連施設など、地域の実態によって取り組みが異なると思われるが、豊かな自然環境の保全に努め、自然環境にできるかぎり負担をかけないような活用方法を考えると共に、ゴミや汚水、有害物や不燃物などの処理方法も将来を見て再検討することが必要であろう。

 

?A施設条件
先程の「現代若者考」でも簡単に述べたが、最近の青年は豊かさの中で生まれ育ってきている。物心ついたころからすでに自分の部屋や専用のテレビを持ち、あまつさえ専用の電話(携帯やPHS)を持っている。また、多くの学校関係者が修学旅行などで経験し、指摘するところだが、仲間とさえ一緒に風呂に入ることをいやがるそうである。現代は日本の歴史上、おそらく最も“個”への欲求が強まった時代なのではあるまいか。また、以前は若者(特に大学生)のアルバイトというと、その理由として学費や生活費のためという答えをあげるケースが多数を占めたが、現在は交際費や服を買う、あるいは娯楽のためという答えが多数を占めるようである。つまりは、豊かな生活を送るためという視点で貫かれている。
この2点から青年の家の施設面を考えると重要なポイントが浮かび上がる。それは、建物が“今”にマッチしているかということである。むろん、いたずらに豪華な設備を誇れとか、若者に媚びた施設を作れとか、そういう類いのことを言おうとしているのではない。しかし、研修室と宿泊棟があれば事足りるとした時代は、遠い過去のことである。「タダだから来る」のではなく、「タダでも来ない」のである。
平成8年3月に「青年の意識と行動に関する研究会」がまとめた冊子『青年の意識と青年の家利用に関する研究』には、これらのことを具体的に指摘する貴重なデータがいくつか見られる。この冊子は、青年の家の利用者・国立オリンピック記念青少年総合センター・大学在学生の三者を対象に質問紙調査の形で青年の家の実態を分析し、その問題点を明らかにしようとしたものであるが、たとえば、質問項目の中の、青年の家の施設・設備に関する改善を求める記述では、クーラーの設置・拡充やテレビの設置・拡充、コンセントの不足、シャワーの設置・拡充、自販機の設置、部屋の仕切りを鍵付きのドアーになどの内容が見られ、宿泊施設の充実や

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION